「死ぬまでに学びたい5つの物理学」を読んで

2021216

三原高校第18回生

佐伯 尚

著者の山口栄一京都大学大学院総合生存館教授が、子供のころ両親を亡くし、自分の世界に閉じこもっていた。19歳の時、三陸のローカル線を乗り継ぎながら北海道に行った。そこで、物理学者のパウリが書いた「相対性理論」を読んだ。最初はわからなかったが、津軽海峡を渡る青函連絡船の中で、3回目を読んでいる時、数式が輝きだし、アインシュタインの重力場に行きついた時、この宇宙の構造はすべてこの方程式から導きだされ、美しい姿に接した。この体験は、自分にゆるぎない軸を与え、人生を一歩前に進めることができたとのこと。

東京大学大学院で物理学博士号を取り、物理学を生業とする身となった。物理学の教科書はすべて、「物理学を利用する」ことを暗黙の前提として書かれている。

教授の経験から、人を強くし、困難に立ち向かえ、自分の世界を飛び出して別の世界に行ける、そのような物理学を教えたいと考えた。

 そこで、講義は毎回、前半は従来のものの見方を壊した物理学者たちがどんな時代と環境に育ちどのような道筋をたどって新たな理論を築いたか、後半は実際に当時の数学を使って、物理学者が天啓に至ったプロセスを追っていった。この講義のお内容を記述したのがこの本である。

 概要は、次の通りである。

   孤独から生まれた科学革命―万有引力の法則

ニュートンと万有引力の法則について。母親に捨てられたニュートンの生い立ちと、どのようにして万有引力の法則を発見したか、当時の数学だけを使っての証明など。

   哲学から解放された科学―統計力学

統計力学という壮大な物理学を作り上げたボルツマン。異なる論者たちに激しく攻撃され自殺した。数式を使わずに統計力学のエッセンスを味わう。

   宇宙の設計図を見つけたーエネルギー量子仮説

ブランクは、42歳の誕生日に、量子力学を生み出したエネルギー量子仮説を発見。晩年ナチスに次男坊を殺され心を病んだブランクがその仮説にどうやってたどり着いたかの、その道程を学ぶ。

   失わなかった子供の空想力―相対性理論

アインシュタインの相対性理論で、彼には先生がいなかったにも関わらず、その後の科学を全く変えてします3つの理論を発見。その一つの相対性理論を中学の数学で導く。

   神はサイコロを振るー量子力学

ニュートンの古典力学を覆して、20世紀最高の「知」を提供しただけでなく、コンピュータやインターネット・携帯電話などのハイテクを生み出した量子力学。歴史学者ルイ・ドゥ・ブロイの論文を出発点に、アインシュタインを経て、シュレーディンガーとハイゼンベルクがそれぞれ量子力学を発見するまでの物語。

   山口教授が考案したイノベーション・ダイヤグラム

上記の5つの物語に登場する物理学者たちがどのようにして「知の創造」を成し遂げるに至ったかを示すイノベーション・ダイヤグラムの提案

 

特に、興味をそそったのは①、④と⑥。高校時代は定理として習ったようで、このような説明があると、もっと天文学に興味が持てたと思う。長くなったので、①の概要だけ紹介します。

 

「孤独から生まれた科学革命―万有引力の法則」

(1)ニュートンの業績

   微積分法の発見

   万有引力の法則の発見など力学発展への貢献

   工学に関する数々の発見

(2)万有引力発見へのプロセス

  アリストテレス(BC384322)の天動説

地球を中心に玉ねぎの皮のように55の天球が層をなし、一番内側が月を、二番目が太陽を運び、それからはいくつかの天球が各々の惑星を運び、一番外側が無数の恒星を運ぶ。

  アリスタルコス(BC310230)の地動説

宇宙の中心に太陽が位置しているとの地動説を最初に唱えたが、受け入れられず。

   プトレマイオス(83頃~168)の天動説の精密化して体系化

 

アリストテレスの天動説では説明のつかない、惑星の運動(東から西への移動から今度はその逆方向への移動)を説明するため、惑星は、「エカント(架空の点)」と地球の中点を中心に離心円を描き、その円周上の一点の太陽の周りを恒星が回ると考えた。

   アリストテレスの天動説はキリストの宇宙観として採用

・コペルニクス(14731543)の地動説を擁護した、ジョルダーノ・ブルーノ(1548

1600)を火あぶりの刑に処せられた。

・ガリレオ・ガリレイ(15641642)は異端審問にかけられた。

  ケプラー(15711630)3法則

コペルニクスの地動説では、観測事実と計算結果がうまくいかず、ひらめいたアイディアが惑星の楕円軌道であった。(アリストテレスとプトレマイオスのパラダイムを「破壊」するプロセス)

・第一法則(楕円軌道の法則):惑星は太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を動く。

・第二法則(面積速度一定の法則):惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く

面積は、一定である。

・第三法則(調和の法則):惑星の公転周期の2乗は、軌道の長半径の3乗に比例

する。

  ニュートン(1642~)の万有引力の法則

・すべての物体は互いに引き合う。その力は中心力(その向きが、二つの物体の重心を結んだ直線状にあるような力)であって、その力の大きさFは引き合う物体の質量ⅿとMの積に比例し、距離Rの2乗に反比例する。

 FG×mM/R2 

    ここで、G6.67×10-11m3s-2kg-1

・プリンピキアの出版と、ロバート・フックとの光学理論、反射望遠鏡、万有引力の法則について対立、また、ライプニッツと微積分法発見の先取権裁判闘争

(3)追体験(ニュートンの万有引力からケプラーの第二法則を求める)

  ・図1-2で、S1S2を証明

  ・図1-3で、Aの位置にいた惑星が1日後にBに来たとします。もし太陽がなければ、次の1日後にこの惑星は直線AB上のCの位置にいる。ここで、惑星はどこからも力が働かないとき、ニュートンの第一法則により等速運動をするので、AB長さはBC,と等しくなり、次の式が成り立つ。

三角形SABの面積=三角形SBCの面積・・・(1)

   ここで太陽の存在を考慮すると、万有引力による変位BVを惑星に与え、Bにいた

惑星はCに移動し、三角形BCVと三角形BC Cの面積は等しくなる。したがって、

SBを底辺として同じ高さを持つので

三角形SBCの面積=三角形SBCの面積・・・(2)

    式(1)と(2)より、

 

      三角形SABの面積=三角形SBCの面積

ケプラーの第1法則と第3法則の証明は、ここではなかったが、「プリンキピア」を読んで理解した。長くなったので別の機会に紹介したい。

 

山口栄一教授のこの本が面白かったので、次の本も読んだ。

(a)JR福知山線事故の本質 企業の社会的責任を科学から捉える NTT出版

(b)イノベーションはなぜ途絶えたか 科学立国日本の危機 ちくま新書

 

(a)については、私が川崎重工業のTQM推進部にいたころ、上司の副社長が主催する全社技術会議で、この事故を教訓事例として報告した。これは事故報告書をベースにして、ハインリヒの法則の観点から記述したもの。

山口教授は、事故報告書の脱線との表現に疑問を持ち、乗客の事故時の車両の傾き証言と、曲率半径300mでの転覆速度の計算から、これは脱線でなく転覆であると看破し、次の点が事故の根本原因としている。

 ①事故現場の曲率半径は、高速道路の関係で600mでは設計できなかとしている

  が、図面でそれができることを確認し、なぜ600mにしなかったのか。

また、新幹線で航空機のフラッター現象対策技術を応用して、新幹線の走行安全性を計算した、国枝正春博士(元国鉄鉄道技術研究所車両運動室長、元日本機械学会会長)の技術が伝承されず、安全最高速度をこの計算より高い速度としており、時速70kmに減速の表示はあったが、転覆速度を運転手に伝えていなかった。

  ②人間から失敗は排除できないので、このカーブの半径を600mにできないならば、スピードリミッタ機能付のATSを設置すべきであった。

 

山口教授の①の技術の伝承については、川崎重工のエンジニアリング部門にもあった。それは、最初に設計した技術者の設計思想が、のちにこの設計を部分変更するときにその思想に気が付かないで失敗するケースが多かった、そこで私は、その部門の図面、計算書の設計思想の伝承方法の改善の支援を行った経験があったので、山口教授の科学者としての目の付け所は素晴らしいと感じた。

 

(b)については、アメリカでは、SBIRSmall Business Innovation Research)精度で、サイエンス型産業を劇的に変えて成長したが、日本版SBIR制度では失敗した。

 

日本の補助金制度の問題点とイノベーションを生み出せなくなった日本企業の問題点の解決方法を提言している。リスクに挑戦する社会の創設、イノベーションソムリエの育成と経営チームに科学の専門家を、また誰もが科学する社会の構築を。

 

なお、ここに掲載した図面は、この本から転記させていただきました。

 

「ブラックホールを見つけた男」

2021年1月28 

三原高校18回生 佐伯 尚

 

 新型コロナウイルスの影響で、外出を控えている間、気の向くまま本を読んでいる。

地球温暖化についての本を読んでいる時、たまたま、地球温暖化問題の図書館の隣の棚に、「ブラックホールを見つけた男 上下(著者:アーサー・I・ミラー、訳:坂本芳久 草思社文庫)」があった。ブラックホールの撮影に成功したとの記事を思い出し、読んでみた。

  

 宇宙にはブラックホールが存在する。1930年、その事実を初めて理論的に指摘したのは、インドからやってきた19歳の天才少年、チャンドラセガールだった。英国にわたる船の中で、「X線と相対論」の本から、アインシュタインの特殊相対論で高速に近い速さで運動している物体がどうなるかを学んだ。高速に近い領域は、ニュートン物理学の支配を完全に超えたところにある。この理論によると光速は、光源がどのような運動をしていようと常に同じ速度で、光速を超える速さで運動することはない。また粒子の質量が速度で変化するとの特殊相対論を適用し、「チャンドラセガール限界」と呼ばれる星の重量限界について数学を用いて導いた。これは、星が白色矮星になるための上限質量のことで、進化して燃料を使い果たした星は、質量がチャンドラセガール限界以下になっていれば白色矮星として一生を終えることができる。しかし、この上限を超える星の場合は、どこまでも収縮していく可能性を明らかにした。どこまでも収縮していく星、それはブラックホール(当時はこの言葉がなかったが)に他ならない。

 

 この理論を発表した、1935年1月11日のイギリスの王立天文学会で、学会の重鎮であるエディントンは、白色矮星は収縮後コアができ、それ以上は収縮しないと考えており、この天体物理学最大の発見を根拠なく否定し、嘲笑の的にした。その結果ブラックホールの研究は40年近くも停滞し、チャンドラセガールの人生に大きな影を落とすことになった。

 

 白色矮星の上限質量を導いたチャンドラセガールの理論は、星の内部に相対論と量子論を適用して得られたもので、星の構造を扱ったどの理論より論理的に筋が通っていた。

だが新理論が受け入れられるためには、クリアする必要の条件があった。それは、理論からの予測が現実の世界で観察される現象と一致しなければいけないが、それから予想される現象や、それを検証する手立ては提案できなかった。無限に小さくなった星を計測できるはずがないし、電波天文学、X線天文学も未発達の時代にあっては、ブラックホールを形成する超新星爆発の仕組みも何一つ分かっていなかったから、提示できなくても無理はない。

 

 この本は、チャンドラセガールの85年近い人生の物語であるが、ブラックホールという発想がたどった紆余曲折の道のりを語っている。ブラックホールをめぐる論争だけでなく、ブラックホール研究に大きな影響を与えた一般相対理論と量子力学の歩み、原子核物理学の誕生と発展、中性子星の発見、超新星研究と核兵器の開発との密接なつながりなどのテーマにもおよんでいる。

知らない内容が多く、また興味がわいたので、関係する書籍を読んだ。文末にその一部を載せています。 

 

 ブラックホールの言葉が生まれたのは、チャンドラセガールが最初に発想を得てから、30年以上経過した1967年だった。今では、ブラックホールの写真も撮られており、理論上の存在ではなく、宇宙そのものの秘密を解き明かすカギを握っていると考えられている。

 

 チャンドラセガールは、1910年にインドで生まれで、のちにアメリカに帰化した理論天体物理学者である。おじさんは、1930年、「ラマン効果の発見(ラマン分光器)」でノーベル賞を受賞したラマンである。チャンドラセガールは、19831019日の73回目の誕生日にノーベル賞を授与するとの連絡をもらった。受賞理由は、「白色矮星の構造研究」であった。しかし、受賞理由が30年前の研究であり、その後の研究。「星の構造(1929年から39年)」、「星の動力学(1938年から43年)」、放射伝達(1943年から50年)」、「流体及び電磁流体の力学的安定性(1952年から61年)「楕円形状の平衡(1961年からの68年)」、一般的相対理論と相対論的天文物理学(1962年から71年)」、ブラックホールの数学理論(1974年から83年)」が評価されていないことで不満であった。

 

 ノーベル賞受賞が新たな研究に足を踏み込んだ。それは、重力波の研究で、重力波が星にぶつかったとき、新たな重力波が発生することなど、重力波の27編の論文を残し、彼の創造性が衰えることはなかった。フェラリーとの共同研究で、重力波の衝突理論がブラックホールの理論と同一線上に構築できることを考え付いた。(フェラリー論文)

 

 70代に入ってからも、「ニュートンのプリンキピア」と、「モネと一般相対論」を研究した。「ニュートンのプリンキピア」を読み、ニュートンの説明方法(と到達した結果の的確さに感動し、彼は20世紀の数学を用いて解析し、『チャンドラセガールの「プリンキピア」講義』を出版した。また、モネと一般相対理論の特徴を論じたエッセイを書き上げた。

「真理と美―科学における美意識と動機」

 

 この本を読むのに苦労したが、新しいことを発見した科学者の苦悩、美しさを求める科学など、大変も面白い内容だった。

 次は、チャンドラセガールの上記の書籍を読んでみたくなった。

 

・「巨大ブラックホールの謎」 本間希樹 講談社

・「死ぬまでに学びたい5つの物理学」 山口栄一 筑摩書房

・「数学が解き明かした物理の法則(ニュートンのプリンキピアから量子力学まで)」

 大上雅史 和田純夫 ベレ出版

・「プリンキピアを読む ニュートンはいかにして万有引力を説明したか」

和田純夫 ブルーバックス

・「E=mcのからくり エネルギーと質量はなぜ等しいのか」山田克哉 ブルーバックス

・「宇宙を創る実験」 村山斉 集英社新書

・「ハッブル望遠鏡 宇宙の絶景」沼澤茂美 脇屋奈々代 三笠書房

・「ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで」

ホーキング 訳 林一 早川書房

・「宇宙をつくる実験」 村山斉 集英社新書

・「ニュートリノでわかる宇宙・素粒子の謎」 鈴木厚人 集英社新書

・「ファイアマ 物理学を読む(量子力学と相対性理論を中心に)」竹内薫 ブルーバックス 

 

・「重力理論」 和田純夫 講談社

 

 

 

 

日本の数学者が「ABC予想」を証明の快挙

 

2020520

 

三原高校18回生 佐伯 尚

 

 

 

昨年末に、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読んだ。これは、300年以上証明されなかった「フェルマーの予想」を証明したワイルズの物語である。

 

 

 

「フェルマーの予想」は、ピタゴラスの定理を一般化した式、xnynzn (n≧3) を満たす3つの整数は存在しないというものであった。

 

 

 

この証明には、日本人の数学者の志村五郎と谷山豊もこの問題に取り組んでおり、一時証明がなされたとの報道もあったが残念ながら実現しなかった。しかし、ドイツの数論の数学者のゲルバルトフライが「谷山・志村予想」がフェルマーの最終定理につながることを発見しており、ワイルズは「谷山・志村予想」の証明し、「フェルマーの予想」に決着をつけた。

 

 

 

この本を読んで数理に興味をもち、数学の定理(小宮山博仁)などを読んでいたところ、京都大学院数値解析研究所の望月新一教授が、数論の「ABC予想」を証明したとの記事を見つけた。

 

 

 

望月教授は、昭和437月生まれで、5歳の時父親の仕事の関係で米国に渡った。中学生の1年間日本に戻ったが、ずっと米国で教育を受けてきた。ハイスクールは、伝統と名門の誉れ高い、フィリップス・エクセター・アカデミーだった。1985年、プリンストン大学に飛び級で入学し、1985年に卒業した時は、19歳でした。そのまま同大学院に進み、23歳でPhDを取得し、32歳で京都大学数理解析研究所の教授となったとのこと。

 

 

 

ABC予想」は世界の数学者が30年余り挑戦して解くことができなかった難問で、1985年にジョゼフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーにより提起された次の数論の予想である。

 

***************************************

 

a+b=c

 

を満たす、互いに素な自然数の組(a,b,c)に対し、d=radabc)とする。

 

この時、任意の正の実数ε>0に対して、

 

c>1+ε 

 

となる組(a,b,c)は、高々有限個しか存在しないであろう。

 

 

 

(注)rad:日本語で根基(radical)といい、自然数nについて、その標準分解を考えて、そこに現れる素数の指数を全部1としたものをいう。

 

***************************************

 

 

  この証明は1630年代に提唱され解決までに300年以上かかった「フェルマーの最終定理」や、1850年代に提唱され150年以上たった今も未解決の「リーマン予想」に匹敵する数学の難問とされ、証明できれば今世紀最大級の成果になるとも言われてきた。

 

  望月教授は、「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)と呼ばれる新しい理論を1人で築き、この理論を使って「ABC予想」を証明した。「IUT理論」は前提となる概念から独自に作り出すなど、これまでの数学とは全く異なる枠組みで理論を構成している。

 2012年に、自身のホームページ上で発表し、PRIMSに投稿した4本の論文全体で600ページという数学としては異例の長さの論文だった。このため審査は長期間におよび、論文の掲載までにおよそ8年かかった。

 一方で、以前から論文の正しさに疑問を投げかけていた研究者*2も海外を中心に存在していて、望月教授は自身のホームページなどで、新しい枠組みの議論を一から始めて、一つずつ受け入れてもらいたいとしています。

 

 

 

  *2;主な研究者

 

① 2018年数学のノーベル賞といわれる「フィールズ賞」を受賞した、

    ピーター・シュルツ

 

     ② 2006年「フィールズ賞」を受賞した、テレンス・タオ

 

     ③ 望月教授が19歳で入学した、プリンストン大学大学院の指導教員で、

             モーデル予想でフィールズ賞受賞のファルティングス教授

 

   

 

加藤文元(ふみはる)著の「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」を購入して、畑仕事の合間を縫って、コロナウイルスの緊急事態宣言が実施された8日から、5日間で興味深く読無ことができた。

 

この理論を理解する数学者も少ない新しい数学であるが、5日間で読むことができるほど、一般人に理解できる例え話による解説書であった。

 

 

この著者は、望月教授と同い年で、京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了、理学博士で、京都大学准教授、熊本大学教授をへて、東京工業大学理学員数学系教授。京都大学時代、IUT理論の構築に向けて歩み始めていた望月教授と二人で、定期的にセミナーをおこなって、IUT理論について議論したとのこと。

 

 

 

「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」のは、望月教授が、整数論の「ABC予想」に関連して発表した「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」について、一般の人にわかりやすく伝えるために書かれたものである。

 

 

 

この中で、非常に興味を持ったのは、IUT理論を用いて「フェルマーの予想」を証明した箇所とその波及効果です。

 

 

(1)【強いABC予想からフェルマーの最終定理へ】

 

*************************************

 

強いABC予想を仮定して、フェルマーの最終定理を証明します。背理法で証明するので、nを3以上の自然数として、

 

                xnynzn

 

を満たす自然数の組(x,y,z)が存在したとします。x,y,zに共通因子があるなら、それで割っておいて、x,yは互いに素であるとしてもよいです。

 

このとき、(xn,yn,zn)はABCトリプルになります。よって、znradxnynzn2ですが、根基の定義から

 

radxnynzn2radxyz2で、x,y<zですからradxyz2≦(xyz2<(z32=z6となり、よって、

 

                znz6

 

となります。これは自然数n6より小さいことを示していますが、n3以上でしたから、nの可能性は3,4,5,しかありません。しかし、これらの場合には、フェルマーの最終定理が正しいことは昔からわかっていました。ですから、ここで矛盾となり、よって背理法により、フェルマーの最終定理が証明されました。

 

(注)強いABC予想とは

 

    ABC予想のd1+εの1+ε=Nとして、N=2ととれば、どんなABCトリプルについても、例外なくcは必ずd2より小さいと予想すること。まだこれは解かれていません。

 

*************************************

 

 

 

1回目読んだときは、強いABC予想を用いて、あの300年以上の難問であったフェルマーの定理が証明され、感激しました。

 

しかし、論考するために、この内容を精読したところ次の疑問が出てきました。

 

この背理法での証明方法の記述の中で、赤字で示した箇所「これらの場合には、フェルマーの最終定理が正しいことは昔からわかっていました。」なので、強いABC予想からフェルマーの最終定理が解かれたとの表現には違和感があります。皆さんはどう思われますか。

 

 

 

(2)【その波及効果】

 

 ABC予想(あるいは強いABC予想)は、それだけでチャレンジングな問題であるが、実は他の様々の問題と関係している。ABC予想が証明されると、以下の予想が自動的に正しいことになるそうです。IUP理論が正しければ素晴らしい快挙です。残念ながら私には理解はできませんが、研究する数学の面白さがここにあるように思います。

 

 ・実効版モーデル予想

 

 ・シュピロ予想

 

 ・フライ予想

 

・双曲的代数曲線に関するヴォイタ予想

 

 

 

是非、「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」を読まれることをお勧めします。

 

 

日本の数学者が「ABC予想」を証明の快挙

 

2020520

 

三原高校18回生 佐伯 尚

 

 

 

昨年末に、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読んだ。これは、300年以上証明されなかった「フェルマーの予想」を証明したワイルズの物語である。

 

 

 

「フェルマーの予想」は、ピタゴラスの定理を一般化した式、xnynzn (n≧3) を満たす3つの整数は存在しないというものであった。

 

 

 

この証明には、日本人の数学者の志村五郎と谷山豊もこの問題に取り組んでおり、一時証明がなされたとの報道もあったが残念ながら実現しなかった。しかし、ドイツの数論の数学者のゲルバルトフライが「谷山・志村予想」がフェルマーの最終定理につながることを発見しており、ワイルズは「谷山・志村予想」の証明し、「フェルマーの予想」に決着をつけた。

 

 

 

この本を読んで数理に興味をもち、数学の定理(小宮山博仁)などを読んでいたところ、京都大学院数値解析研究所の望月新一教授が、数論の「ABC予想」を証明したとの記事を見つけた。

 

 

 

望月教授は、昭和437月生まれで、5歳の時父親の仕事の関係で米国に渡った。中学生の1年間日本に戻ったが、ずっと米国で教育を受けてきた。ハイスクールは、伝統と名門の誉れ高い、フィリップス・エクセター・アカデミーだった。1985年、プリンストン大学に飛び級で入学し、1985年に卒業した時は、19歳でした。そのまま同大学院に進み、23歳でPhDを取得し、32歳で京都大学数理解析研究所の教授となったとのこと。

 

 

 

ABC予想」は世界の数学者が30年余り挑戦して解くことができなかった難問で、1985年にジョゼフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーにより提起された次の数論の予想である。

 

***************************************

 

a+b=c

 

を満たす、互いに素な自然数の組(a,b,c)に対し、d=radabc)とする。

 

この時、任意の正の実数ε>0に対して、

 

c>1+ε 

 

となる組(a,b,c)は、高々有限個しか存在しないであろう。

 

 

 

(注)rad:日本語で根基(radical)といい、自然数nについて、その標準分解を考えて、そこに現れる素数の指数を全部1としたものをいう。

 

***************************************

 

 

  この証明は1630年代に提唱され解決までに300年以上かかった「フェルマーの最終定理」や、1850年代に提唱され150年以上たった今も未解決の「リーマン予想」に匹敵する数学の難問とされ、証明できれば今世紀最大級の成果になるとも言われてきた。

 

  望月教授は、「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)と呼ばれる新しい理論を1人で築き、この理論を使って「ABC予想」を証明した。「IUT理論」は前提となる概念から独自に作り出すなど、これまでの数学とは全く異なる枠組みで理論を構成している。

 2012年に、自身のホームページ上で発表し、PRIMSに投稿した4本の論文全体で600ページという数学としては異例の長さの論文だった。このため審査は長期間におよび、論文の掲載までにおよそ8年かかった。

 一方で、以前から論文の正しさに疑問を投げかけていた研究者*2も海外を中心に存在していて、望月教授は自身のホームページなどで、新しい枠組みの議論を一から始めて、一つずつ受け入れてもらいたいとしています。

 

 

 

  *2;主な研究者

 

① 2018年数学のノーベル賞といわれる「フィールズ賞」を受賞した、

    ピーター・シュルツ

 

     ② 2006年「フィールズ賞」を受賞した、テレンス・タオ

 

     ③ 望月教授が19歳で入学した、プリンストン大学大学院の指導教員で、

             モーデル予想でフィールズ賞受賞のファルティングス教授

 

   

 

加藤文元(ふみはる)著の「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」を購入して、畑仕事の合間を縫って、コロナウイルスの緊急事態宣言が実施された8日から、5日間で興味深く読無ことができた。

 

この理論を理解する数学者も少ない新しい数学であるが、5日間で読むことができるほど、一般人に理解できる例え話による解説書であった。

 

 

この著者は、望月教授と同い年で、京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了、理学博士で、京都大学准教授、熊本大学教授をへて、東京工業大学理学員数学系教授。京都大学時代、IUT理論の構築に向けて歩み始めていた望月教授と二人で、定期的にセミナーをおこなって、IUT理論について議論したとのこと。

 

 

 

「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」のは、望月教授が、整数論の「ABC予想」に関連して発表した「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」について、一般の人にわかりやすく伝えるために書かれたものである。

 

 

 

この中で、非常に興味を持ったのは、IUT理論を用いて「フェルマーの予想」を証明した箇所とその波及効果です。

 

 

(1)【強いABC予想からフェルマーの最終定理へ】

 

*************************************

 

強いABC予想を仮定して、フェルマーの最終定理を証明します。背理法で証明するので、nを3以上の自然数として、

 

                xnynzn

 

を満たす自然数の組(x,y,z)が存在したとします。x,y,zに共通因子があるなら、それで割っておいて、x,yは互いに素であるとしてもよいです。

 

このとき、(xn,yn,zn)はABCトリプルになります。よって、znradxnynzn2ですが、根基の定義から

 

radxnynzn2radxyz2で、x,y<zですからradxyz2≦(xyz2<(z32=z6となり、よって、

 

                znz6

 

となります。これは自然数n6より小さいことを示していますが、n3以上でしたから、nの可能性は3,4,5,しかありません。しかし、これらの場合には、フェルマーの最終定理が正しいことは昔からわかっていました。ですから、ここで矛盾となり、よって背理法により、フェルマーの最終定理が証明されました。

 

(注)強いABC予想とは

 

    ABC予想のd1+εの1+ε=Nとして、N=2ととれば、どんなABCトリプルについても、例外なくcは必ずd2より小さいと予想すること。まだこれは解かれていません。

 

*************************************

 

 

 

1回目読んだときは、強いABC予想を用いて、あの300年以上の難問であったフェルマーの定理が証明され、感激しました。

 

しかし、論考するために、この内容を精読したところ次の疑問が出てきました。

 

この背理法での証明方法の記述の中で、赤字で示した箇所「これらの場合には、フェルマーの最終定理が正しいことは昔からわかっていました。」なので、強いABC予想からフェルマーの最終定理が解かれたとの表現には違和感があります。皆さんはどう思われますか。

 

 

 

(2)【その波及効果】

 

 ABC予想(あるいは強いABC予想)は、それだけでチャレンジングな問題であるが、実は他の様々の問題と関係している。ABC予想が証明されると、以下の予想が自動的に正しいことになるそうです。IUP理論が正しければ素晴らしい快挙です。残念ながら私には理解はできませんが、研究する数学の面白さがここにあるように思います。

 

 ・実効版モーデル予想

 

 ・シュピロ予想

 

 ・フライ予想

 

・双曲的代数曲線に関するヴォイタ予想

 

 

 

是非、「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」を読まれることをお勧めします。

 

 

日本の数学者が「ABC予想」を証明の快挙

 

2020520

 

三原高校18回生 佐伯 尚

 

 

 

昨年末に、サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読んだ。これは、300年以上証明されなかった「フェルマーの予想」を証明したワイルズの物語である。

 

 

 

「フェルマーの予想」は、ピタゴラスの定理を一般化した式、xnynzn (n≧3) を満たす3つの整数は存在しないというものであった。

 

 

 

この証明には、日本人の数学者の志村五郎と谷山豊もこの問題に取り組んでおり、一時証明がなされたとの報道もあったが残念ながら実現しなかった。しかし、ドイツの数論の数学者のゲルバルトフライが「谷山・志村予想」がフェルマーの最終定理につながることを発見しており、ワイルズは「谷山・志村予想」の証明し、「フェルマーの予想」に決着をつけた。

 

 

 

この本を読んで数理に興味をもち、数学の定理(小宮山博仁)などを読んでいたところ、京都大学院数値解析研究所の望月新一教授が、数論の「ABC予想」を証明したとの記事を見つけた。

 

 

 

望月教授は、昭和437月生まれで、5歳の時父親の仕事の関係で米国に渡った。中学生の1年間日本に戻ったが、ずっと米国で教育を受けてきた。ハイスクールは、伝統と名門の誉れ高い、フィリップス・エクセター・アカデミーだった。1985年、プリンストン大学に飛び級で入学し、1985年に卒業した時は、19歳でした。そのまま同大学院に進み、23歳でPhDを取得し、32歳で京都大学数理解析研究所の教授となったとのこと。

 

 

 

ABC予想」は世界の数学者が30年余り挑戦して解くことができなかった難問で、1985年にジョゼフ・オステルレとデイヴィッド・マッサーにより提起された次の数論の予想である。

 

***************************************

 

a+b=c

 

を満たす、互いに素な自然数の組(a,b,c)に対し、d=radabc)とする。

 

この時、任意の正の実数ε>0に対して、

 

c>1+ε 

 

となる組(a,b,c)は、高々有限個しか存在しないであろう。

 

 

 

(注)rad:日本語で根基(radical)といい、自然数nについて、その標準分解を考えて、そこに現れる素数の指数を全部1としたものをいう。

 

***************************************

 

 

  この証明は1630年代に提唱され解決までに300年以上かかった「フェルマーの最終定理」や、1850年代に提唱され150年以上たった今も未解決の「リーマン予想」に匹敵する数学の難問とされ、証明できれば今世紀最大級の成果になるとも言われてきた。

 

  望月教授は、「宇宙際タイヒミュラー理論(IUT理論)と呼ばれる新しい理論を1人で築き、この理論を使って「ABC予想」を証明した。「IUT理論」は前提となる概念から独自に作り出すなど、これまでの数学とは全く異なる枠組みで理論を構成している。

 2012年に、自身のホームページ上で発表し、PRIMSに投稿した4本の論文全体で600ページという数学としては異例の長さの論文だった。このため審査は長期間におよび、論文の掲載までにおよそ8年かかった。

 一方で、以前から論文の正しさに疑問を投げかけていた研究者*2も海外を中心に存在していて、望月教授は自身のホームページなどで、新しい枠組みの議論を一から始めて、一つずつ受け入れてもらいたいとしています。

 

 

 

  *2;主な研究者

 

① 2018年数学のノーベル賞といわれる「フィールズ賞」を受賞した、

    ピーター・シュルツ

 

     ② 2006年「フィールズ賞」を受賞した、テレンス・タオ

 

     ③ 望月教授が19歳で入学した、プリンストン大学大学院の指導教員で、

             モーデル予想でフィールズ賞受賞のファルティングス教授

 

   

 

加藤文元(ふみはる)著の「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」を購入して、畑仕事の合間を縫って、コロナウイルスの緊急事態宣言が実施された8日から、5日間で興味深く読無ことができた。

 

この理論を理解する数学者も少ない新しい数学であるが、5日間で読むことができるほど、一般人に理解できる例え話による解説書であった。

 

 

この著者は、望月教授と同い年で、京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了、理学博士で、京都大学准教授、熊本大学教授をへて、東京工業大学理学員数学系教授。京都大学時代、IUT理論の構築に向けて歩み始めていた望月教授と二人で、定期的にセミナーをおこなって、IUT理論について議論したとのこと。

 

 

 

「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」のは、望月教授が、整数論の「ABC予想」に関連して発表した「宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論」について、一般の人にわかりやすく伝えるために書かれたものである。

 

 

 

この中で、非常に興味を持ったのは、IUT理論を用いて「フェルマーの予想」を証明した箇所とその波及効果です。

 

 

(1)【強いABC予想からフェルマーの最終定理へ】

 

*************************************

 

強いABC予想を仮定して、フェルマーの最終定理を証明します。背理法で証明するので、nを3以上の自然数として、

 

                xnynzn

 

を満たす自然数の組(x,y,z)が存在したとします。x,y,zに共通因子があるなら、それで割っておいて、x,yは互いに素であるとしてもよいです。

 

このとき、(xn,yn,zn)はABCトリプルになります。よって、znradxnynzn2ですが、根基の定義から

 

radxnynzn2radxyz2で、x,y<zですからradxyz2≦(xyz2<(z32=z6となり、よって、

 

                znz6

 

となります。これは自然数n6より小さいことを示していますが、n3以上でしたから、nの可能性は3,4,5,しかありません。しかし、これらの場合には、フェルマーの最終定理が正しいことは昔からわかっていました。ですから、ここで矛盾となり、よって背理法により、フェルマーの最終定理が証明されました。

 

(注)強いABC予想とは

 

    ABC予想のd1+εの1+ε=Nとして、N=2ととれば、どんなABCトリプルについても、例外なくcは必ずd2より小さいと予想すること。まだこれは解かれていません。

 

*************************************

 

 

 

1回目読んだときは、強いABC予想を用いて、あの300年以上の難問であったフェルマーの定理が証明され、感激しました。

 

しかし、論考するために、この内容を精読したところ次の疑問が出てきました。

 

この背理法での証明方法の記述の中で、赤字で示した箇所「これらの場合には、フェルマーの最終定理が正しいことは昔からわかっていました。」なので、強いABC予想からフェルマーの最終定理が解かれたとの表現には違和感があります。皆さんはどう思われますか。

 

 

 

(2)【その波及効果】

 

 ABC予想(あるいは強いABC予想)は、それだけでチャレンジングな問題であるが、実は他の様々の問題と関係している。ABC予想が証明されると、以下の予想が自動的に正しいことになるそうです。IUP理論が正しければ素晴らしい快挙です。残念ながら私には理解はできませんが、研究する数学の面白さがここにあるように思います。

 

 ・実効版モーデル予想

 

 ・シュピロ予想

 

 ・フライ予想

 

・双曲的代数曲線に関するヴォイタ予想

 

 

 

是非、「宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃」を読まれることをお勧めします。

 

集中講義 これが哲学! 今を生き抜く思考のレッスン

2020年1月6日

三原高校第18回生 佐伯 尚

 

 この書籍は、西研の哲学入門の講義(河出出版)である。

 この中に、哲学とは何か、哲学の方法、哲学はなんのためかとの記述があり、これまで何故かを考えていた答えの一部が見つかったので、記述する。

 

【哲学とは】

 哲学とは、考えの「普遍性」(普遍調察性)を目指すゲームである。

 (1)理路(理屈)をかたちにする。「・・・・だから・・・・だ」という考えを提出する。

 (2)納得がすべてー権威や伝統に従わない。自分が納得しなければ受け入れない。

 (3)抽象概念を用いるー数、全体と部分のように抽象概念を用いる。

 (4)なるべく根本より考えるーどこから考えればいちばん深いところから考えたことになるか、

    と問う。

 

 【哲学の方法】

 (1)何らかの問いに対して、すぐさま「正解」を求めずに

 (2)「そもそも何故このような問いが浮かび上がってきたのか」と問う

 (3)すると、その問いをもたらしている「生のありよう」が見えてくる。

 (4)そこで、この生の在り方をさらに解明しようとする。

 

 【哲学は何のために】

  「納得した生き方をしたい」という願いと勇気をあたえるもの

 

 

方法序説を読んで

2020年1月1日

三原高校第18回生 佐伯 尚

 

 神戸市の図書館で、梅原猛の「人類哲学へ」を借りた。

 この中で、スコラ哲学を批判したデカルトの哲学は「死」の哲学であり、この哲学によって基礎づけられた近代科学技術文明が発達した事実に目をおおわれ、この哲学の本質を十分認識できなかった。原発事故、環境破壊を経験するに、これらを考慮する新しい哲学「人類哲学」が必要ではないかと批判していた。

 

 この哲学に共感したので、なぜ批判されているのかを知るためデカルトの「方法序説」を読むことにした。デカルトと言えばは、我思う、ゆえに我あり」で有名である。

 

 「方法序説」は、1637年、デカルトが41歳の時初めて公刊した著作で、「理性を正しく導き、学問において真理を探究するための方法の話(序説)。加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学」のタイトルであった。

 

 本書は、6つの部分から構成されている。

 

 第1部は、学校で習う語学は昔の本を理解するのに必要であり、寓話は精神をめざめさせる。思慮をもって読めば、判断力の助けになる。すべての良書を読むことは著者である過去の世紀の人々と親しく語りあうようなもので、しかもその会話は、彼らの思想の最上のものだけを見せてくれる、入念な準備されたものだと言っている。しかし、学校で学んだ人文学やスコラ学などを検討し、人生に役立たないことを確認し、学校を卒業後、軍人として、書物を捨てて、ヨーロッパ各地で軍隊生活を送った。

 

 第2部は、学問や自分の思想の改革のため、4つの方法が示されている。

   第1は、私が明証的に真であると認めるのでなければ、どんなことも真として受け入れない

  こと。(明証性の規則)

   第2は、私が検討する難問の一つ一つを、できるだけ多くの、しかも問題をよりよく解くため

  に必要なだけの小部分に分割すること。(分析の規則)

   第3は、私の思考を順序に従って導くこと。そこでは、最も単純で最も認識しやすいものから

  始めて、少しずつ階段を上るようにして、最も複雑なものの認識まで、上ってゆき、自然のまま

  では互いに前後の順序が付かないものの間にさえも順序を想定して進むこと。(総合の規則)

   第4は、すべての場合に、完全な枚挙と全体にわたる見直しをして、何もみおとさ

  なかったと確信すること。(枚挙の規則) 

   これは、数学の難問題を解くのに役立ち、佐らには自然学の諸問題にも適用され、諸学問の

  普遍的な方法となりうる期待が表されている。

   トヨタメソッドの一つの「なぜなぜ分析」にもこの方法が適用されているように思う。

  まず、対象とする課題を小部分に分割して記述する。(分析)次に、その課題に対して、その

  原因となるなぜ(明証)を繰りかえす。(分析) そのなぜに 対し、対策を立案する。

  (総合) この分析内容を見直し、見落としがないことを確認する。(枚挙)

 

 第3部は、道徳について定めた。  

  第一の格率は、私の国の法律と慣習(宗教を含む)に従うこと。

  第二の格率は、自分の行動において、できる限り確固として果断であり、どんなに疑わしい意見

 でも、一度それに決めた以上は、三輪馬手確実な意見であるときに劣らず、一貫して従うこと。

  第三の格率は、運命よりむしろ自分に打ち勝つように、世界の秩序よりも自分の欲望を変える

 ように、常に務めること。

 

 第4部は、形而上学の基礎である、方法的懐疑をへて、「精神としての私」、「神」、「外界の

存在」が示されている。哲学史上有名な、「われ思う、ゆえに我あり」、「心身二元論」、そして「スコラの用語や概念を残しつつなされる神の照明」など。

 

 第5部では、公刊することができなかった「人間論を含む世界論」のエッセンスが想像上のものとして語っている。宇宙や自然の現象、機械的な人体論が記述され、心臓と血液循環、動物と人間の差異が述べられている。

 

 第6部では、ガリレオ事件の報に接して衝撃をうけるデカルトの姿が見られ、学問の展望が開かれている。人間を自然の支配者となす哲学、自然のけんきゅうとその意味、「世界論」の公刊を中止したいきさつ、そしてこの序説を後世に残す理由など。

 

 翻訳者の谷川多佳子氏(日本の哲学者」、筑波大名誉教授、デカルト、ライプニッツなど17世紀フランスの哲学が専門)は、以下のように評価・批判している。

【評価】

 デカルトは、この中で表したかったのは、普遍的なものとなって後世に残るであろう、学問の方法、新しい科学や学問の基礎を示す広い意味での哲学の根源、自然の探究の展望と意味なのである。新しい哲学の方法を示し(数学の基にした4つの法則)、新しい科学の一端を垣間見せ(宇宙論や機械的な人体論)、その哲学の出発点(われ思う、ゆえに我あり)を確立し、形而上学の基礎を述べた。20世紀の今日に至るまで、その基礎構造は、我々の学問の基礎基本的な枠組みをなしているといえる。考える私、近代の意識や理性の原型、精神と物質(身体)、あるいは主体と客観の二元論、数学をモデルとする方法、自然研究の発展など。デカルト主義は、近代合理思想の中心原理となっていった。

【批判】

 現在、こうした基礎と出発点を持つ近代思想全般に対しては、見直しと批判の機運が高まっている。デカルト哲学を祖とする近代思想の超克や解体、あるいは脱構築が問題となり、さらには科学技術文明の弊害、例えば環境問題や自然破壊、はては医療への不信、倫理の不在までも、デカルト主義をその思想基盤とする見方まである。

 

 

 

 

 

                  哲学とは

 

20191217 

三原高校第18回生 佐伯 尚

  

哲学を勉強している人に自殺者が多いと聞いたことがある。子供のころ、近隣のKさんが学生の時に自殺したときである。

 

哲学者といえば、ソクラテス、プラトン、ヘーゲル、ルソー、カントなどの名前が浮かぶ。これらの哲学者の名前は、学校の倫理学の教科書に出ていたように記憶している。これはなぜなのか? 数学者のピタゴラスの名前も出てくる。これはなぜなのか?

 

 哲学とは、英語のフィロソフィーの訳語で、叡智を愛する学問であると漠然と考えていた。西田幾多郎の善の研究を読み始めて、哲学って何だろうと改めて思った。

  

 哲学とは何かを調べた。

  

「世界のエリートが学んでいる教養としての哲学(小川仁志著PHP)」を再度読んだ。この書籍は、グローバルに活躍する世界のエリートは哲学の基礎知識が当たり前であり、教養とする必要があるとしている。ここでは、哲学を7つのツール(歴史、思考、古典、名言、関連知識、人物、用語)として多面的に説明している。課題を持って読んだので、よく理解できた。特に、思考のツールでは、20の哲学的思考法、例えば弁証法などの思想をどのようにビジネスや問題解決に生かせるかが書かれており大変興味深かかった。しかし、ソクラテス以前の古代ギリシャの哲学者の、タレスは万物の根源が水であるとか、万物は流転で有名なヘラクレイトスは火であるなど、自然科学もしくは物理学のようで、上に述べた疑問がさらに深まった。

  

カントの「道徳形而上学原論」の序文で、古代ギリシャの哲学は、物理学、倫理学及び論理学の三つに分かれていた、この区分は、哲学の本性に考えて至極適切である、と書かれていた。これで哲学者の中に、倫理学者、数学者があるのが理解できた。

  

 インターネットで苫野一徳の「初めての哲学的思考」を見つけた。哲学についてわかりやすく書かれており、よくわかった。

 

 

「光の量子コンピュータ」(古澤明著)を読んで 

20191123 

三原高校18回生 佐伯 尚

 

1. はじめに 

2011年に、カナダのベンチャー企業ディー・ウェーブ・システムズが「世界で初めて量子コンピュータの開発した」との発表があった。

 

このコンピュータを使って、今年の1023日に、米Google が「量子超越性の実証」を発表し、

 

  既存のスパコンでは計算に約1万年かかるような、ある特殊な問題を、量子コンピュータでは

    320で解けることを示した。大変興味を持った。

 

   たまたま本屋で、表題の本を見つけた。この本を読んで、量子コンピュータの歴史やしくみ、現在の状況、古澤氏が研究開発を進めている光を使う量子コンピュータについて学んだのでその概要を紹介する。

  

2. 世界で初めて量子コンピュータ

  2.1 専門家の注目

  量子コンピュータは、朝永振一郎とともに、「量子電磁力学の分野における基礎研究」でノーベル賞を受賞したアメリカの物理学者リチャード・P・ファイアマンが、1985年に量子コンピュータを実現させることの意義を説いてから、量子コンピュータが注目を浴びるようになった。

 

 2.2 量子コンピュータとは

  古典コピュータは、電子回路を使って計算処理を行ったり、メモリーに記憶したりする。そのたびに使用された電気エネルギーが熱エネルギーとなり排出され、電子回路を冷却するため膨大な電力が必要である。

 

 これに対して、量子コンピュータは、電子や光子などの素粒子の小さなエネルギー単位で、離散値

的な不連続をとる量子を使用したコンピュータで、熱エネルギーを理論上ゼロにでき、省エネルギー

のコンピュータである。

 

 量子コンピュータは、「量子の重ね合わせ」と「量子のもつれ」の原理を利用している。

 

  前者は、1個の量子において、複数の状態が同時に存在している、つまり重ねあわせている

 現象である。すなわち、古典コンピュータは、0または1のデジタル処理であるが、重ね合わせの

 場合、量子ビットとして用いる量子は、観測するまで0と1のどちらの状態にある(重ね合わ

 せ)。これを観測することによって、波束の収縮(注)が起こり、0か1に確定される。

 

   (注)量子は、粒子性と波動性の二重性がある。量子を観測すると、重ね合わせ状態でなく、必ずどちらかの定まった状態しか観測されない。これは、量子が波動性を示しているときは、1つの量子が複数の状態にあり、それぞれの存在確率で同時に重ねあっていると考える。この状態は、観測(測定)によって1点に収束し、粒子性を表す。これを波束の収縮という。

 

   現在開発されている量子コンピュータは、量子アニーリングマシンで、「組み合わせ最適化

      問題(注)」に特化した専用マシンである。

 

   (注)膨大にある組み合わせの中から、最適な組み合わせを見つける問題。セールスマンが自分のすべての顧客を訪問して会社に戻ってくる最短のルートを割り出す「巡回セールスマン問題」。量子コンピュータが完成すると、パスワードが短時間で突き止められるのではないかと指摘されている。

 

   量子コンピュータの課題は、周囲の環境に対して非常にデリケートで、量子の重ね合わせ状態が崩れやすいことである。その対策として、①原子やイオンを使った量子ビット、②超伝導体を使った量子ビット、③スピンを使った量子ピットがあるが、いずれも超低温の環境が必要である。

 

3. 光の可能性と優位性

  3.1 光量子コンピュータの優位性

    古澤氏が研究開発を進めている量子コンピュータの特徴は、量子ビットに光の量子である

  光子(フォトン)を使っていること。

 

   その光量子コンピュータの長所は、室温・大気中でも動作するので、重ね合わせ状態や量子のもつれを生成し維持するための巨大な冷却装置や真空装置が不要で、実用性が高いこと、光は空間を高速で移動するため、情報通信にもそのまま利用できること。

 

   光を使うことの優位性は、次の通り。

      光子は、常温で制御できるため、極低温にする必要がない。

      単一光子を効率よく検出技術がすでに開発されている。

      単一光子の状態を容易に制御できること。

      量子状態を乱さずに、長距離の伝送が可能なこと。

 

 3.2 課題

   量子コンピュータでは、「量子の誤り訂正」の実現がむつかしいが、古澤氏の研究室ではすでに解決している。

  

4. 量子コンピュータの開発の歴史

   1980年:東京大学教養学部理科第Ⅰ類で工学部物理工学科で応用物理・回路学・制御論を学ぶ

   1986年:ニコンに就職し、光メモリーの研究開発

      2年間: 国内留学(東京先端技術研究センター)光化学ホールバーニングの実権 博士号取得

   ・会社:超大容量光メモリーの実用化のため、重大かつ基本的な問題(高速に読み出すこと)を

      気付いた。そこで、物質から光を放出させ、異なる光同士の干渉を利用することで高速

      な読み取りができる「フォトンエコー」も開発実施。極低温が必要で実用化されず。

   1994年:高速読み取りのため、光の粒子としての性質でなく、波の性質を利用すればよいとの

       結論に至った。

   1996年:カリフォルニア工科大学(カルテック)への社会人留学。量子コンピュータの研究

       人間論を含む開発のプロジェクトに参加。誤り訂正に関する理論を構築したジョン・

       プレスキル教授がいた。

   19988月:完全な量子テレポーテーション実験に成功。これは、スクイーズド光と呼ばれる

         状態の光を使い、光の波としての性質、つまり振幅と位相をという2つの物理量

         をテレポーテーションした。

 

 (成果)

  *無条件で量子もつれを生成する方法を見つけ出した

   *完璧なベル測定の方法を見つけた

 

19989月:帰国。東京大学大学院工学系物理工学専攻の助教授に就任

     2003年:イギリスのピーター・ヴァンルックと一緒に、「ヴァンルックー古澤の判定条件」

     理論を構築。

     2004年:3者間の量子もつれの量子テレポーテーションネットワークに成功 

     成功の意義は3者間がインターネット同様ネットワークを組む最小の単位であること。

         大規模な量子コンピュータと、量子ネットワークの実現に向けた大きな一歩となった。

        2009年:9者間量子もつれの制御に成功

      9者間の量子のもつれを用いて、量子誤り訂正がかのうであることの示すことに成功

        2011年:シュレジンガーの猫状態の量子テレポーテーションに成功

 

     1998年当時、カルテックで、キンブル教授とブラウンスタイン教授が発表した論文に、シュレジンガーの猫状態の量子テレポ―テイションに関する理論計算を見つけた。その時から「これを実現できたらヒーローになれるな」とずっと思い続けていた。その夢を13年かけて実現した。

 

    (注)シュレジンガーの猫とは、生きた状態と死んだ状態の重ね合わせ状態にある猫が、観測することで初めて、生きているのか死んでいるのかが確定されるというもの。

  

5. 実現へのカウントダウン

 

・シュレジンガーの猫状態の量子テレポーテーションの成功と、ニコラス・メニクーチ博士の「時間領域多重1方向量子計算方法」と組み合わせれば、最強の量子コンピュータを実現できることに気づいた。

 

・もう一つの課題である、光パルスを使い、時間領域多重で多者間の量子もつれを作るときの判定基準は、「ヴァンルックー古澤の判定条件」であった。

 

2013年:時間領域多重実験で、1万量子ビットン相当する1万パルスまで増やすことに成功

 

2016年:100万パルスを達成。測定結果を保存するメモリーがいっぱいになったからで、実際にはいくらでも増やすことができる。

 

2015年:量子テレポーテーションの心臓部の光チップ化に成功

 

     これまでの量子テレポーテーション装置は、大きな工学定盤上に、多数のビームスプリンターやミラーマウントといった光学部品を配置することで実現したものである。

 

     そこで、量子テレポーテーション装置の心臓部である量子もつれ生成・検出装置の光チップ化に取り組み、英ブリストル大学のジェレミー・オブライエン教授とNTTとの共同研究で光チップ化に成功した。

 

・光子メモリーの開発:この光子メモリーは、単一光子だけでなく、シュレジンガーの猫状態を含むあらゆる量子状態で使える。これを光情報処理の基本技術として確立を目指す。光子メモリーの技術開発を進め、従来のコンピュータのメモリー波に量子ピット数を上げていく計画。

 

20179月:革新的発明「ループ型光量子コンピュータ」(武田俊太郎助教発明)

 

       「時間領域多重1方向量子計算方法」と「ループ型光量子コンピュータ」を

       使って、光量子コンピュータの完成を目指す。

 

 ・視野に入っている光量子コンピュータの完成(20年先)

 

  量子計算処理を実現できた段階で、それをネットワーク化していくことにより、光量子通信に発展させていきたいとかんがえている。将来、光量子コンピュータが実現し、さらに光量子通信に拡張していくことで、スーパー・スーパー・コンピュータネットワークが実現するものと期待している。(2019年2月)

 

 

6. 感想

  ノーベル賞級の発明といわれており、スーパー・スーパー・コンピュータネットワークが実現することを期待している。原子力発電分1機の電力を使用する現状のスーパーコンピュータに代わり、省エネで地球の救世主になるのを願っている。

 

 

究極の大規模汎用量子コンピュータ実現法を発明、東大古澤明教授らノーベル賞級の発明

                           (2017 年 9 月 22 日)

 

100分de名著「法華経」を読み始めて

2019年11月17日

三原高校18回生 佐伯 尚

 今月の100分de名著は、「法華経」です。

解説者は、仏教思想研究会科の植木雅俊氏です。九大理学部物理学科卒業、同大学院修了、東洋大学大学院文学研究科博士課程中退後、中村元*氏に師事。お茶の水大学で男性として初の博士の学位を取得。著書に「ほんとうの法華経」、「梵漢和対照現代語訳法華経」

 *中村元:日本のインド哲学者 東大教授「東洋人の思惟方法」、「仏教語大辞典」など

 

 西田幾多郎は、「善の研究」、第4編「宗教」では、「哲学の終結と考えている宗教について余の考えをのべたものである」と記述している。すなわち、哲学は、宗教を語ることによって帰結するといっており、「法華経」を読むこととした。

 

 仏教は小乗仏教と大乗仏教に分かれ、日本には中国を経由して大乗仏教が伝わった、また聖徳太子が記したといわれる三経義疏(さんぎょうぎしょ)の一つに法華経義疏」があるといった知識しかなかった。

 

 NHKのテキストを読むと、仏教の歴史、法華経の位置づけ、その特徴などがよくわかった。今後の展開が楽しみである。

 

 第1回の放送分で、「サンスクリット語(梵語)」と「ルンビニ」の二つの言葉を見つけた。

ここでは、この言葉にまつわるエピソードを紹介する。

 

「サンスクリット語(梵字)」

 私の住んでいる神戸市西区神出町田井には、真言宗の西光寺がある。その墓地には、家内の親や親戚の墓があり、五輪塔が設置されている。阪神淡路大震災で五輪塔も崩れたが、その後しばらくして復旧された。お盆に家内の親の墓にお参りに行って、五輪塔に刻まれている塔婆種子「空、風、火、水、地」の異変に気がついた。

 五輪塔の4面には、発心(表)、修行(向左)、菩提(裏)、涅槃(向右)として、「空、風、火、水、地」が刻まれており、意味は同じであるが、発心の梵字に修行点、菩提点、般若点が追加されてた文字になっている。

 この組み合わせが間違っていたので、家内の父に話すと、「専門家が直しているので、そんなはずはない」と大変叱られた。

 幸い、五輪塔はコンクリートで固定されていなかったので、こっそり内緒で直しておいた。

ダウンロード
五輪塔の塔婆種子
五輪塔の4面の「空、風、火、水、地」
五輪塔.pptx
Microsoft Power Point プレゼンテーション 410.4 KB

 私とサンスクリット語の出会いは、膀胱に悪性がんがあると町医者から告げられたことがきっかけです。

 川重の明石技術研究所で、「車両に搭載するニッケル水素電池の開発」や「ロボットを使った自動細胞培養装置の開発」を手伝っていたある日、トイレで小便をすると、牛乳のような尿がでてきた。

 翌日、西明石にある町医者で検査を受けた。その時は、尿は普通の状態に戻っていたが、顕微鏡で見ると赤血球が少し見られた。医者から念のために、レントゲン検査と超音波検査をうけた。レントゲン検査で膀胱に腫瘍があるとのことで、内視鏡で検査した。その腫瘍は内面膜の中から根が出ているので悪性主腫瘍であると告げられた。紹介された医療センターで同様の検査で、同じ病名を告げられ、精神的に落ち込んだ。そこで出会ったのが般若心経で、これを唱えたり、写経していると心が安定した。

 1月後、ベッドが空いたので手術をうけた。覚悟をしていたが、採取した腫瘍を分析した結果、幸いにも良性であった。その後、再発はしていない。

 この後も、般若心経に関する本を読んだり、写経を続けているうちに、般若心経を言語で読み書きしたくなり、梵字の勉強を始めた。

 これが、私とサンスクリット語との出会いです。

 

「ルンビニ」

 ルンビニは、仏教の四大霊場の一つで、釈迦誕生の場所である。ネパールへの工事出張時、ルンビニを訪問した。観光化されていなく、ひっそりした場所で、菩提樹が印象に残っている。お土産屋さんがあり、記念に菩提樹の数珠を買った。

 私が勤務する播磨工場では、ネパールのガンジス川にスパン500mの斜張橋(カルナリ橋)の基礎と上部工の建設を行っていた。この工事は、当社が初めて実施するコンクリート工事であるとともに、海外での初めての橋梁建設であり、このため建設工事では、技術課題等が続いた

 そこは、カトマンズから飛行機で2時間のネパールガンジーへ、そこから時速百キロの速度で約1時間の距離で、インド国境から3Kmのところに現場事務所があった。

  何度かトラブル対応でネパールを訪問したが、ある時、現場事務所からカトマンズのホテルまで自動車で帰る時に、ルンビニを訪問した。

 ネパール訪問では、宿舎に蛇がでたこと、ふろ場でサソリに遭遇したことなどいろんな経験をした。そのことについて別の機会に紹介したい。

 

カルナリ橋の全景写真